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東京地方裁判所 平成12年(レ)33号 判決 2000年6月19日

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴の趣旨

1  原判決中、「金18万4,022円並びにこれに対する平成11年3月27日から同年4月26日まで年18パーセントの割合による金員及び同月27日から支払済みまで年36パーセントの割合による金員」(以下「控訴人自認金員」という。)を超える金員の支払を命ずる部分を取り消す。

2  被控訴人の請求中、控訴人自認金員を超える金員の支払を求める部分を棄却する。

二  当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり当審における控訴人の主張を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の二ないし四に記載のとおりであるから、これを引用する。(当審における控訴人の主張)

1  貸付日を利息計算の期間に算入することは、民法140条及び利息制限法に違反する。

利息制限法に違反するというのは、次のような理由による。

すなわち、例えば10万円以上100万円未満の元本を平年において1年間借りる場合、利息制限法による利息の最高限は年1割8分であるが、貸付日を利息計算の期間に算入すると、本来365日分の利息であるべきところ366日分の利息が付されることとなり、年1割8分を超える結果となる。

2  本件において貸付日を算入しない場合、平成11年2月26日の支払による利息充当額は1,380円、元金充当額は8,620円、残元金は19万1,380円となり、同年3月26日の支払による利息充当額は2,642円、元金充当額は7,358円残元金は18万4,022円となる。

三  当裁判所の判断

1  当裁判所も、被控訴人の本訴請求は控訴人自認金員を超える金員の支払を求める部分も理由があると判断する。その判断の理由は、次項のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の五に記載のとおりであるから、これを引用する。

2  控訴人は、消費貸借において貸付日を利息計算の期間に算入することは民法140条及び利息制限法に違反する旨主張する。

しかし、消費貸借における利息は、元本利用の対価であり、借主は元本を受け取った日からこれを利用し得るのであるから、特約のない限り、貸付日から利息を支払うべき義務があると解するのが相当であって(最高裁判所昭和30年(オ)第119号同33年6月6日第二小法廷判決・民集12巻9号1373頁参照)、このことは、消費貸借契約の効力がいつ発生するかという問題であり、期間の計算方法を規定した民法140条とは本来関係のないことであるし、利息制限法による利息の制限とも全く関係がない。

なお、例えば平年の2月12日に弁済期「1年後」の約定で20万円の貸付けが行われた場合、「1年後」の弁済期というのは、民法140条に従い初日(貸付日)を算入しないため翌年の2月12日になるが、その弁済期に支払うべき利息は、前記解釈に従うと、貸付日からのもの、すなわち、1年(365日)と1日分ということになり、これを利息制限法所定の年1割8分の利率で計算すると、元本20万円に対する1割8分の金額を超えることとなる。控訴人は、右のように「1年後」の利息が元本に対する1割8分の金額を超えることをもって利息制限法に違反するかのように主張する。しかし、右利息の計算における利率はあくまでも利息制限法所定の「年1割8分」であって、1年と1日分であるために元本に対する「1割8分」の金額を超えることになるにすぎないから、何ら利息制限法に反するところはない。

控訴人の主張は、独自の見解であって、到底採用することができない。

3  よって、被控訴人の請求を全部認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法67条1項本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 貝阿彌誠 裁判官 釜井裕子 天川博義)

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